近江屋 美術部

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中国絵画概論1

 まず中国絵画にとって大切な要素は「気」と「形」である。一定数の日本人は「形」という言葉はともかくとして「気」というと胡散臭く感じ眉をひそめる場合もあるだろ。

 しかし主観的な趣向はともかくとして、まずはその時代のその人々が何を表現しようとしたのかを考えるとことからはじめる中国絵画とは何かについて考える。主な参考文献は岩波新書「中国絵画入門」宇佐美文理 著をテキストの中心として進めていく。

 

 まず一般的に「気」というのは元気であったり勇気であったり天気や磁気もそうである、おおよそ目に見えない物事を「気」と表現しているのではないだろうか。

 

 中には天気は見える。と思うこともあるかもしれないが我々は天気によって起きた事象、気象を観察しているだけであり、その気象を起こしている原因である根本的な「気」の観察には至っておらず、まずもって初期の中国絵画の起源を紀元前3世紀ころの人間社会と現代日本社会の感覚では尺度が異なるため今の感覚だけで読み解こうとするのはもったいないと感じる。

 

 まず中国絵画の初期は気を直接表現することが中心的課題であった。

 

画象の「幽竹枯槎図(ゆうちくこさず)」は金(きん)の王庭筠(おうていいん)作とされ画家の持っている「気」が表現された作品とされている。

 

「逆境にもめげず高潔を保つ精神性を枯木と竹が表現して物事の形(ここでは特に輪郭線)にとらわれない筆づかいが自由な境地を表現している。我々が精神や心と呼んでいるものも、気のはたらきによると考えられていたので、画家の精神性が表現されたいうことは、画家の気が表現された、あるいは形象化された、と言えるのである」

[宇佐美 p3]

王庭筠(おうていいん)

1151‐1202
中国,金代の文人。字は子端,号は黄華山人。遼東(遼寧省蓋県)の人。翰林修撰に至った。詩文書画に通じ,書法は米芾(べいふつ)に学んで金代第一と称される。また山水墨竹をよくした。行草書による自跋をともなう《幽竹枯槎図巻》(藤井有鄰館)は書画一致を標榜する〈文人画〉の現存作品のうちでもっとも早い時期に属するものの一つである。詩文における元好問とともに,金一代の文化の頂点を形づくる存在である。【小川 裕充】
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版